植物も人も、同じ

前回は、「土と内蔵(デイビッド・モントゴメリー著)」という、私が影響を受けた本について書きました。今回もその続きになります。前回の内容をまとめると、植物と地中にいる微生物は互いに助け合っていて、植物は自ら光合成で作った糖分を分け与えることで、そのお返しに土壌微生物が土中から集めた栄養分を植物が吸収できる形に変えて提供してもらっている。それだけでなく、悪い細菌やウィルス、害虫などからも微生物に守ってもらっている。というものでした。

そこで疑問が湧きます。動物はどうしているんだ?動物は動き回るので、1ヶ所に留まって土壌微生物と栄養を交換するなど、関係を結ぶことができません。ではどうしたのか?微生物を持って歩くことにしたんです!人間の身体には髪の毛から爪先まで、くまなく微生物が存在していて、その大多数が大腸に住んでいます。

大腸にいる微生物たちが私たち人間に与えてくれる恩恵も、植物のそれとなんら変わりはなく、とても重要なものです。それ無しでは生きていけないというくらいに。

植物と土壌微生物の関係のように、私たちも腸内細菌を手厚くもてなせば、彼らはそれに応えてくれます。腸内細菌たちは、私たちの消化器系が分解・吸収できない食物繊維などを消化して、人間にとって必須のビタミンやミネラルなどに変えて提供してくれます。腸内細菌は栄養面だけでなく、私たちの免疫力にも深く関わっています。病原性の細菌やウイルスなどが侵入してきたら、大腸の細胞に危険を知らせるシグナルを送ったり、身体の炎症・抗炎症作用を調整するための物質を免疫細胞に送ったり、などなど多岐にわたります(多すぎて書き切れない!)。

また腸内細菌は、私たちの肉体的な健康だけでなく、精神的な健康にも深く関わっています。心を安定させ安心感を生み出すセロトニンや、やる気の源泉となるドーパミンなど、心の健康を維持するために欠かせない神経伝達物質。その元となる物質は、実は腸内細菌が作っています。元々は、微生物同士がコミュニケーションに使っていた物質を、使い回す形で脳でも活用されるようになったんだそうです(驚愕!)。つまり腸内細菌に栄養を与えずにいると、心の健康も維持ができなくなるんです。その証左に、精神を患う人は便秘や下痢が多いなど、腸内環境に問題を抱える傾向があると言います。

心身ともに健康であるためには、腸内細菌の多様性を保ち、栄養(食物繊維)を与える事が重要。具体的には発酵食品(味噌やぬか漬けなど)や野菜を食べるということ。これって、昔は多く食べていたけれども、現代の食生活では、全く足りていないものでは??

栄養豊富な“良い野菜”を育てるためには、植物に直接働きかけるよりも、微生物が多く住む豊かな土壌を作ることが重要なんです。環境さえ整えてあげれば、植物は自らの力でちゃんと育つのですから。それと同じように、人も心身共に健康であるためには、腸内細菌が多様で豊かになる(腸内)環境を整えることがとても大切。一風変わった本のタイトル“土と内蔵”は、これを意味していたんです。

この本を読み、そして植物を育てて思う事は、「植物と人間は同じなんじゃないか?」ということ。全く別々の仕組みから生じた生物ではなく、同じような摂理に基づいて生きている、といつも感じます。山川草木悉(ことごと)く仏性有り。

植物にとって良い事は人間にも良い事で、植物にとってダメな事は人間にとってもダメなんじゃないかな。そう考えると、植物がとても身近に感じられるのです。